マウンテンミー(山と私)が血肉を蹴散らしながら右往左往する話

京都のドンバ、マウンテンミーの日常と非日常をお送りします。

はじめまして(た)

金麦ばかり飲んでいる

恥ずかしい話をしようと思う。

中学生のころ、「ミュージックステーション草野マサムネと、どう絡もうかなあ」と本気で悩んでいた。

高校のころ、頭のなかはいつもインタビューで自分の音楽創作についてどう語るかでいっぱいだった。インタビュアーの質問にそつなく、しかし魅力たっぷりに語っている自分の言葉にうっとりしていた。

大学に入ったばかりのころ、「サマソニはチャラいからやっぱりフジかな。まあ、地元のよしみでライジングサンくらいには出てもいいかも」と考えてはニヤけていた。

そう。私はバンドマンだ。少なくともバンドマンだった。

今年で33になる。

だが、現実の自分はどうだ。

プログラマとして働くもうだつが上がらず、優秀な後輩に冷ややかな目で見られながらRubyのコードを書く。幸いにして定時で上がれる会社に転職できたものの、仕事が終わったからと言ってやることもなく、会社近くのファミマで野良Wi-Fiを拾いながら金麦を飲む。500mlを飲み干したあと、350ml缶と500ml缶とあたりめを地下鉄への通り道のローソンで購入し、「居酒屋京阪」などとひとりごちつつ車中で飲酒。1時間と少しかけて京都まで帰ってきた頃にはあたりはとっぷり暗くなり、飯も食わないで自宅近くのファミマで購入した金麦500ml缶×2をしばきながら「素人 ハメ撮り」の検索で出てきたエロ動画で自分のマイサンをマイマイし、風呂も入らずに寝てしまう。翌朝は金麦の青く光る缶が転がった部屋で朝5時に目をさまし、質の悪いアルコールで淀んだ頭を抱えながら米だけ弁当箱につめて出社。通勤電車は始発駅乗車であるため座れるが、なんら有意義なことなどせず口から涎を垂らしていたらもう淀屋橋だ。そこから大阪市営地下鉄の満員電車で痴漢にまちがわれぬよう両手を不自然に高く上げながら会社の最寄りで降りると、いつものドラッグストア併設の100均で「マイフレンド 辛味噌大盛り(当社比)ラーメン」「さんま味噌煮缶」計200円也を購入し出社。なんとなくそれとなく仕事をやり過ごせば気づけばまたファミマで金麦だ。

33年生きてきて身につけたものといえば、Vimの使い方と、エロ動画の適切な検索方法くらいしかないんじゃないだろうか。「そんなことないよ」と言ってくれる心優しい恋人もいない。

若いころに思い描いていた「音楽をしている自分」の妄想すらしなくなった。何も夢を見ることも無くなった。

金麦金麦金麦ばーっかり。もう、うんざりだ。青いのは金麦だけで十分だ。

ふと周りを見渡せば友人のバンドはやれ「全国流通」だ「タワレコメン」だ「Avexからメジャーデビュー」だ「こんがりおんがくからリリース」だと騒がしい。私の友人たちは音楽をやってるまたはそれなりに聞いてる人間からすると「それなりに有名な位置」にいたりする。そしてそれが少し私自身の自慢になっていたりもした。サブカル女子にでも話せば「へー!すごい!」くらいは言われるだろう。あわよくばムフフなこともあるかもしれない。だが、そのたびに私は深く落ち込む。「有名なのは彼らであって私ではないからー」とこころの中で叫んでいる。

いつまでもそうしてうじうじしているのは止めよう。感傷なんて犬も食わねえ。

売れてやろうじゃないの。

ここで書き綴っていくことは、そうした何の面白みもない普通のおっさんの普通のバンド生活だ。

毒にも薬にもならないだろう。完全にチラ裏だ。そういうのがお嫌いな方はそっとブラウザバックボタンをおしてくれ。履歴からも完全に削除し、検索予測にも出ないようにしていただきたい。

幸運なことに若い時に比べれば「純粋に音楽だけで売れる」とか「媚は売らない」とかそういうことは気にしない程度には阿呆になった。ここまで書いたような誰の得にもならないような文章を衆目の目に晒すことにも一抹の恥ずかしさも抱かなくなった。

そう。おっさんになった。ただ、私はまだ音楽が好きだ。自分の音楽がどれくらいまで人に受け入れられるのか試してみたい。まだもう少しは自分の作った音楽を好きでいさせてくれ。

これまで培った妙な人脈と仕事で手に入れた知識をフル動員してWeb上だけででも瞬間風速を吹かせてみようと思うのだ。姑息な手段を駆使しようと思うのだ。

その裏側を逐一報告していけたらそれにまさる喜びはない。

期限は来年の10月だ。

そのころまでに私どものドンバ、マウンテンミーがどうなっているか生暖かく見守っていただけると嬉しい。